畑のなかのエレガンス

ここは設計者(筆者)である平宅の自邸です。僕たち家族の住まいは、僕が建築設計、殊にリノベーションや文化財修理に携わっている経緯もあり、当初から中古物件のリノベーションを前提にしていました。東京在住中に築70年を超えて立つこの農家屋に出逢い、購入しました。決め手は敷地も建物もゆったりと広く、前の家主が7年前に屋根瓦を全面葺き替えしていて、風呂が別棟だったこともあり床下や天井裏をみる限り目立った傷みは少なくドシッと構えている姿に安心感と親しみが持てたからです。


購入後しばらくして僕ら家族は東京からUターンし、関・入谷と一緒にしわく堂を立ち上げました。

移住したものの起業したこともあって当初は住宅ローンが組めず、開業から1年を経て、ようやくリノベーションすることができました。

ここは周囲にのどかな田園風景が残る、目の前にも畑が面している土地。

私たち夫婦と小さな息子が過ごす暮らしの場は、農家屋らしい構造を最大限生かした伸びやかな空間と、自ら丁寧に暮らしを作り上げていくための上品さ(エレガンス)もった場所にしたいとイメージしていました。

そのため細かなプランニングの前に、まずは構造躯体や屋根の架けかたを注意深く確認することからスタートして、もとの建物の形に合わせてこれ以上ないくらいプランはすんなり決まりました。

もともと建物が大きいこともあって、リビング空間はキッチンとあわせて35畳にもなりましたが、窓もすべて大きなサッシに新しく入れ替えてとても気持ちがいい空間になりました。やや傾いている部分はすべて建て起こして、耐震、断熱、気密も新築と同じレベルにしています。

各部屋も建物の構造にあわせて間取りをつくり、キッチン、洗面台、トイレのミラーキャビネットはすべてオリジナルでつくっています。

文化農家

香川県は、地域柄か中古住宅の流通やリサイクルがあまり進んでいません。

新しいもの好きな県民性なのか新築信仰が根強いこともありますが、特に我が家のようないわゆる「やつお」と呼ばれる伝統的な農家屋の流通や再生は稀です。

理由は簡単、多くの方がリノベーション後のイメージが湧かないのです。

だからこそ僕は、ここではリノベーションで今の時代でも心地よいと思ってもらえる場所をつくることで、少しでも中古住宅の流通や再生に対するポジティブな印象を届けたいと考えました。

ちょうど高度経済成長期に、一般的な住宅に洋風のインテリアや生活様式が持ち込まれて普及した時には、それらは「文化住宅」と呼ばれ流通しました。

僕は現代の感覚やライフスタイルでリノベーションした農家屋を「ブンカノーカ」と呼ぼうと思います。

住宅取得時のラインナップに、新築や築浅物件のリフォーム以外の選択肢として「ブンカノーカ」があげられるように、生活を実践しながら、取り組んで行きたいなと考えています。

OUTLINE

PJ title

Place
Building type

Complete

Director

Designer

Construction

Site area

Floor area

Photo

ブンカ ノーカ

香川県観音寺市
個人住宅

2020.6

平宅 正人

平宅 正人

山口工務店

661㎡

165㎡

藤岡 優